先手を取って場を制する
ポイント『先手を取って場を制する』
相手の選択肢を狭める
テニスというゲームは相手がいるスポーツであり、相手もあなたと同じように優位な状況を作りたいと思っており、あなたが優位な状況を作りやすいボールを相手が打ってくれる保証はありません。
それでは、あなたが優位な状況を作りやすくしていくためには、どのようにすればよいのでしょうか？
そのために必要となる視点は、相手とあなたのどちらが多くのショットを選べる状況か、という部分にあります。極端な例で考えてみましょう。
Ａ：相手は、いま良いバランスで、ベースラインの少し中から、高い打点でフォアハンドを打ち込もうとしています。
Ｂ：相手は、いまバランスを崩して、サイドライン近辺で、ベースライン後方から、バックハンドを打とうとしています。
さて、相手のショットの選択肢はどちらが多いでしょうか？
もちろんＢという答えになると思います。
では、それに応じて、あなたが考えるべきことがどのように変化してくるか、考えてみましょう。
Ａ：相手は、フォアハンドでどちらのコースにも速いボールで打ち込むことができるので、自分の時間は少ない。それにネットにも距離が近いので、ショートクロスなどのコースも狙うことが可能だし、ドロップショット等も警戒する必要がある。
Ｂ：相手は、追い込まれているので、基本的にはそれほど強いボールは返ってこないだろう。むしろスピードの遅いボールが返ってくる可能性が高い。また、もしかしたらチャンスボールになるかもしれないので準備しておこう。
というようになってくるでしょう。このように、Ｂのケースだとあなたが考えておくべきことも少なくて済みます。
そして、考えるべきことが少なくて済むということは、それだけ迷わなくて済む、ということであり、ボールが来た時に瞬時に動き始めることにつながっていきます。
このように、相手の選択肢が限られた状況に持っていくことが、自分を優位な状況に持っていく方法になります。
ここで、ミスが生まれやすい状況はどんな状況だったかをもう一度整理してみましょう。
① ネットから遠いところからボールを打つほうが難しく、ネットから近いところからボールを打つほうが簡単
② ネットより低いところでボールを打つほうが難しく、ネットより高いところでボールを打つほうが簡単
③ コートの真ん中を狙ったほうがコートに入りやすく、コートの端を狙うとコートに入りづらい
④ ネットの高いところを通したほうがコートに入りやすく、ネットの低いところを通すとコートに入りづらい
⑤ 今いる場所から遠い場所へ打たれると難しくなり、近い場所へ打たれると簡単
⑥ 時間に余裕が無いと難しく、時間に余裕があると簡単
⑦ 得意なショットは簡単で、不得意なショットは難しい
このように整理できました。
そして、このミスが生まれやすい状況とは、相手の選択肢が限られている状況とも言うことができます。
場を制する
このように考えていくと、あなたが打つべきボールが少しずつ明確になってきました。あなたは、自分が打つショットのリスクを考えつつ、相手の選択肢が限られた状況に持っていくことが必要となります。
ですが、相手もあなたの選択肢を奪おうとしてきます。相手も、あなたにミスをさせようと、深いボールや速いボール、あなたの苦手なボールを打ってきます。少し具体的に考えてみましょう。
① あなたと相手は五分五分の状況です。あなたは、相手のフォアハンドへボールを打ちました。すると、相手があなたが苦手とするバックハンドに狙ってきました。
② あなたは、苦手なバックハンドなので、ミスをしないようにひとまずクロスへ返します。
③ すると、相手は回り込んでフォアハンドをさらにバックハンドへ深く跳ねるボールを打ってきました。
④ あなたは、深くて跳ねるボールに対して、なんとかクロスへ返球しようとしますが、甘くなってしまいます。
⑤ すると、相手はベースラインより中に入って、あなたのフォアサイドに強いボールを打ってきました。
⑥ あなたは、追い込まれ、返すので精一杯になります。
⑦ 相手は、それをボレーで決めました。
いかがでしょうか？相手もあなたの苦手なボールや、ミスをさせようとボールをコントロールしてきます。では、この状況を考えてみると、どの時点が最もあなたがリスクが少なく、優位を築きやすかったでしょうか？
答えは①のシーンになります。
つまり、厳しい状況に追い込まれてから、あなたの優位を回復させよう、相手の選択肢を狭めようとしても、すでに状況がかなり厳しいので、あなたのリスクもあがってきます。となると、そうなる前に手を打っていくことで、あなたは優位な状況を作りやすくなっていきます。
いかに相手より先に優位な状況を作り、場を制していくかが、大事なポイントになってきます。
ですので、テニスにおいてサービスはキープすることが基本になってくるのは、ここがポイントになります。つまりサーバーは、自分が最初にショットを選択することができるので、ポイントが始まる前の五分五分の状況から、自分が先に優位な状況を作りやすいわけです。逆にリターン側は、相手が先に優位な状況を作ろうとしているのを、防がなければならないので、なかなかブレイクするのは難しくなってくるわけです。
そのため、あなたがサービスをどのコースにどのように打つか、によって、そのポイントでどちらが優位に立つか、が決まってくることになります。また、ストロークラリーをしている状況で五分五分の状況であれば、あなたがいかに先手を取って優位に立つか、相手の選択肢が狭いショットを打つかが、勝負の分かれ目となってきます。