『ベイビーステップに学ぶテニス上達法』その10:対荒谷戦
2016/01/20
漫画「ベイビーステップに学ぶテニス上達法』⑩
相手はタクマじゃねぇ。目の前にいるコイツなんだ
エーちゃんと荒谷くんとの試合中盤で、荒谷くんが放つ言葉です。
この試合、序盤は弱点ををタクマに聞き出したエーちゃんが、優位に試合を進めます。
しかし、荒谷くんは持ち前のプレーを取り戻し、エーちゃんを圧倒していきます。
その後、必死に食らいつくエーちゃんに対して、徐々に攻め急ぐ場面が出てきます。
そしてエーちゃんは、そのチャンスを見逃さずに、これまでの必死に食らいつく展開と、チャンスがあったら相手の弱点を攻めていく展開を織り交ぜていきます。
おとなしく道を開けろ!!
試合後半までの荒谷くんは、
『俺はこいつで江川逞を超える!』
『俺はタクマに勝ってプロを目指す!おとなしく道を開けろ!!』
『即効で片付ける!』
という考えが頭のなかを占めていました。
目の前の相手ではなく、タクマに勝つことばかりにとらわれてしまいます。
荒谷くんは、タクマにずっと負け続け、万年2位と自分で感じていました。
バカにされたり、人に下に見られたりした経験があるほど、そのことにとらわれてしまいますよね。
10戦全敗し、周りの評価はタクマにばかり集中し、自分は蚊帳の外に置かれている。
そんなふうに感じていました。
それがひいては、エーちゃんの試合において、攻め急いだミスにつながっていたのです。
とらわれる心を生み出している自分
ただ、少し視点を変えてみましょう。
漫画の中では、決してタクマが荒谷くんを見下したりしているわけではありません。
そして、万年2位にとどまっているのも、タクマが悪いわけではないのに、タクマがいることによって自分が2位である、と相手を意識しているのは、他ならない荒谷くん自身にあります。
つまり、他ならない自分の心が、自分へのストレスを生み出しているのです。
そして、そういう状態の時ほど、欲しいもの(タクマに勝つという結果)が喉から手が出るほど欲しくなり、喉から手が出るほど欲しくなるほど、自分の心がストレスを生み出して、その結果が逃げていく、というスパイラルに陥ります。
そして、そこから脱却するコツは、ズバリ『視点を変える』ことにあります。
強えじゃねえか
それを意識して行ったかはさておき、荒谷くんは見事に試合のなかで視点を変えます。
まず最初に、少し引いた視点で現実を見始めます。
自分のミスが多くなっていること
今まで焦ってキレていいことがなかったこと
そして、次に今の対戦相手のエーちゃんを見出します。
・コートカバーリングとコントロールで弱点を補っていること
・戦略をしっかり持っていること
・派手な武器はないが、穴という穴もないこと
そして、エーちゃんのことを素直に『強えじゃねえか』と認めます。
相手の強さを認めると、自分がやらなければならないこと、できることに集中し始めます。
それが荒谷くんの弱点を修正させ、スキをなくしていくのです。
素晴らしい対戦相手が、自分を高め、お互いを高めてくれる
この試合を少し引いた視点で見てみると、宮川くんが言っていたように、エーちゃんが弱点を突いたことにより、荒谷くんのメンタル的な弱点があらわになり、そしてそれがひいて、荒谷くんの素晴らしい変化のきっかけとなっていきます。
つまり、素晴らしい対戦相手が、自分を高め、お互いを高めていく素晴らしい試合となっていくのです。
たしかに、目の前の試合に負けたり、いつも勝てない選手がいることは、苦しいことです。
でもその相手は自分を高めてくれる存在であり、『負けた』という結果は、これから自分がさらに強くなる、うまくなるためのきっかけでしかない、と捉えてみてはどうでしょうか?
皆さんがより良いテニス人生を送られることを祈っております!